2008年8月29日金曜日

民間資金のインフラへの投資に関する懇談会

2008/07/22

 国土交通省の「民間資金のインフラへの投資に関する懇談会(以下、インフラ懇談会)」(座長:中川雅之日本大学経済学部教授)は、多様な資金調達方法を探ることなどを目的に会合を重ね、このほど中間とりまとめとして民間資金をインフラの整備・更新に充てた際の利点や課題を整理した。

 懇談会では国内外の事例を紹介し、道路や鉄道、水道のほか、学校、病院、エネルギーなどの施設を含む広義の公共公益施設を対象に、民間資金の利用に関して自由な意見を求めた。日本の現状として寄せられたのは「官側は大きな権限を民間に渡すことに躊躇(ちゅうちょ)がある」「住民には継続してサービスを受けられるのか不安がある」などの声だ。こうした意見を基に、民間へのリスク移転を進めるためのガイドラインの必要性や、民間資金をインフラ整備・更新に充てたときの住民のメリットについて説明することの重要性などについて課題を整理した。

 インフラ懇談会が発足した背景には、高度成長期に建設した大量のインフラ施設が更新期を迎えるなか、事業主体である公的機関の資金確保が立ちゆかなくなっている現状がある。地方公共団体財政健全化法の施行によって、今後、地方自治体の資産売却志向はますます強くなる見通しだ。こうしたなかで、年金基金などの民間資金をインフラに導くことが選択肢として位置づけられるようになった。海外では、インフラを投資対象とするファンドがビジネスモデルとして成立しており、日本でもインフラ施設を投資対象とするREIT(不動産投資信託)が上場している。

 座長を務める中川教授は「税を財源とする方式にこだわらない多様な資金調達方法を探し出さなければ、今後、行政サービスを住民に提供することが困難になるかもしれない。インフラだから公的所有・公的管理という意識は大きく変える時代に入りつつある」と語る。一方、事務局を務める国交省は「いますぐ方向性を示すとか、政策に生かすとかの話ではない。将来、何ができるのか基礎材料を集めている」というスタンスだ。

 インフラ懇談会は座長のほか、日興シティグループ証券、三井不動産、大成建設、みずほコーポレート銀行、日本政策投資銀行、三菱商事UBSリアルティ、東京都など合計8人の学識者、実務者で構成。4月から7月まで4回の会合を重ねた。今後も非公開で議論を続ける方針だ。

 懇談会での主な意見は以下の通り。

▼日本のPFI(民間資金を活用した社会資本整備)は、どちらかというと請け負いや委託の延長線上にある。現在のインフラファンドの成功・注目事例は、かなり長期間でインフラ整備・運営の権利を渡して自由に民間活力を活用しようしている。
▼官側には、大きな権限を民間に渡すことに躊躇(ちゅうちょ)がある。大胆なリスク移転ができるようなガイドラインをつくり、地方自治体の不安を解きほぐす必要がある。
▼住民には、公共サービスを民間にまるごと移転することで、継続してサービスを受けられるのか不安がある。不測の事態を規制や契約でカバーするセーフティーネットを用意する必要がある。
▼民間資金の導入を進めることで、財政資金がどれくらい浮き、住民の税負担がどれだけ緩和されるのかを説明することが重要だ。
▼公的資産はいくつもの部局がばらばらに管理している現状だが、税金軽減の検討をトータルでする場合は、公的資産の管理を集権化した方が効率的である。

菅 健彦 [ケンプラッツ]

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