 経済的搾取、支配的管理、ゆがんだ養育感、ケア技術の破綻、施設内
ネグレクト、体罰、施設内性虐待
 施設内虐待を生む要因(スライド4〜6)
 福祉原理の問題、制度的要因、施設の「養育観」の問題
 子どもの「問題」をとらえる視点の不足
 子どもの「挑発性」の症状としての理解が不足
 その他の症状(感情爆発、反社会性行動)への対応不能
 CWの個人的要因(子どもの愛情飢餓による行動をCWが誤解、職員
自身の自己評価など)
 児童養護施設の性的問題(スライド7〜9)
 現在の把握状況(3%前後)と実態(10〜20%)のギャップが大きな
混乱の原因に
 思春期前被害の見落とし 〜 日本では幼少期被害が把握されていな
い。海外では思春期被害割合と同程度とのデータあり
 施設における加害・被害ネットワークの存在
 1人の特異な現象ではないと捉える必要あり。1例あれば空間的(現
入所児間)、時間的(既に退所してしまった児童間)な連鎖あり
 性的トラウマの再現性 〜 被害を受けた児童が同じような被害を受
ける「挑発性」、「再現的行動化」を行ってしまう傾向あり。
 長い歴史を持つ施設内連鎖
 児童間の性加害被害は同性間が一番多い。
 性的行動により「支配—被支配」関係を確認する意味合いが根底 〜
性衝動が原因ではない。動物の「マウンティング」と同じ
 制度虐待としての側面 〜 制度が正しく運用され、その結果施設内
で被害に遭うこと。海外では施設内虐待の一つとして類型あり。
 「男児同士だから大丈夫」と子どもだけで入浴させる、就寝時に児童
同士が同じベットで寝る 等が温床となっている可能性高い 〜 必ず大人が関与
するようにすることで被害を防ぐことが可能。正しい知識を持ち対応することが必
要。
 SBI子ども希望財団で行っている児童養護施設向け全国研修 〜
参加施設の全てで同性間の被害ありの報告 〜 「ない」としている施設は気がつ
いていないだけ
 「あってはならない」は「ない」ではない
 施設入所児童に特有の問題
 幼少期から性的刺激に触れやすい、伝播しやすい 〜 年齢構成が多
様なため
 施設で生活するという環境が、自分の「生」「性」へ思いを深くする
ことに
 施設入所児の出身世帯は多児?加えて居住環境が狭いことが多いた
め、何らかの形で両親の性行為を目撃している → 性的関心が高いまま施設入所す
ることに
 CWからの性的被害 〜 CWの個人的要因(子どもの愛情飢餓によ
る行動をCWが誤解、職員自身の自己評価など)
 性的虐待に由来する心理・行動上の問題(スライド10〜11)
 児童の性被害の有無を把握するために理解しておく必要あり(発
見、予防)
 小学生半ば位までの特徴
 性化行動 〜 児童本人にとっては性的な意味合いはない行動だ
が、周りの大人にとっては性的な意味合いのある行動 → 幼児で現れていればほぼ
被害経験有
 性的遊びのうち通常の発達的特徴を逸脱しているもの
 人前での過剰な性器いじり 〜 指で行う行為は自然には発生しな
い。何らかの経験(見る)や被害を受けたことがあると考えられる
 性的再被害化傾向、性的加害行動
 思春期以降の二つの傾向 〜 精神科症状と逸脱行動化(多くの場合
重複する)
 精神科症状 〜 自傷、自殺、摂食障害、内科的な原因を伴わない
様々な身体化症状(下腹部の痛み、嚥下困難、過呼吸)、解離性障害
 逸脱行動 〜 「援助交際」(売春) 〜 トラウマの再現行動によ
りさらに再被害の連続に。
 性的虐待を受けた子どものケア(スライド12)
 入所前の正確なアセスメントの必要性
 ルーチンのアセス項目に必ず含める
 面接者の態度により子どもが否認することもあり → 適切な面接手法
(司法面接 など)をとること必要
 子どもの行動のスーパービジョンを強化
 行動観察と不適切行動の抑制
 性化行動や性的な人間関係への対応
 性的トラウマ体験との関連や意味の理解を進めるケア
 行動修正を行う
 グループワークによる心理的教育と性教育
 欧米では子どもには個別対応よりもグループワークの方が効果的とさ
れている
 大阪大学 藤岡淳子「ロードマップ」〜教育的側面強い。乗れない児
童には別なアプローチ方法が必要
 性的トラウマ体験に焦点を当てた心理療法の必要性
 欧米では被虐待児へのケアはトラウマの治療に焦点を当てた対応が基
本
 子ども間の施設内虐待への対応(スライド13)
 全体像の把握が必要 〜 1エピソードで終わることはない
 加害・被害ネットワークの存在 〜 子ども間の権力構造を正しく把
握
 集団力道としての把握
 加害者と被害者の分離が原則 〜 被害児の安全と安心感を確保
 加害児の措置変更
 加害児が過去に被害を受けている可能性が高い。現在の加害行為はひ
とまず置き、過去の被害体験から扱う必要あり。自分の体験を受け止められないと
他人の気持ちに共感できない 〜 措置変更ではそのような対応は困難(措置変更
先では「加害者」としての対応になりがち)
 次第に措置変更先が無くなってきている 〜 加害児・被害児の増
加。同一法人で対応せざるを得ない状況となってきている。
 小規模化が進めば同一法人でも対応が可能な状況が生まれる
 日常生活の見直しと予防的な取り組み
 個人のバウンダリィ(生活空間、境界線)を尊重した生活
 就寝時、部屋の出入り
 曖昧なままだと被害が起きやすい、支配関係が生まれやすい
 まずは職員が尊重する必要(ノックをする、勝手に引き出しを開けな
いなど)
 支配—被支配に注目 〜 小集団にして大人との関わりを濃密にするこ
とで子ども間の支配関係が弱めることが可能に
 特定的な性教育
 一般的な性教育は通用しない。逆効果となることも
 子どもの背景を念頭に入れた教育が必要(すでに権利を奪われてい
る、被害にあっているかもしれないことを前提として性教育)
 性教協("人間と性"教育研究協議会)の養護施設サークルと障害児
サークルで実践報告や著書あり
 CAP(Child Assault Prevention=子どもへの暴力防止プログラ
ム)やセカンド・ステップなどの心理教育プログラム
 施設入所児童向けのプログラム(施設CAP)あり。積極的に導入す
べき 〜 埼玉県では補助制度あり
 CAPは被害防止、権利意識を育てるプログラム。セカンドステップ
は加害防止、怒りのコントロールを目的としたプログラム
 子ども間の性被害を受けた子どものグループワーク(スライド
14〜15)
 単に安全なところで生活させるだけでなく、グループワークを組み込
んで治療的なケアを行っていく必要あり。
 グループワークの内容
 体験の言語化、体験に対する認知・感情のゆがみの同定、体験へのコ
ンテクストの付与(体験の意味づけを変化させていく)、自分が受けた被害は
「性」体験ではないという意味づけ
 子ども間の性加害をなした子どものグループワーク
 被害・加害が重複する場合はまず被害について対応
 加害行為への直面化
 加害行為に至る心理を理解
 被害者の心理状況の共感的理解 ← ここまで至れるように支援継続
 謝罪をめぐる問題
 大人側の都合で安易に「謝罪」、「許し」を強要しがち 〜 一番問
題
 被害児に対しては「許し」を強要してはいけない
 被害児の怒りが十分に出ないと体験や気持ちを昇華できない 〜 加
害に転化することも
 けりをつけさせてはいけない
 加害児に対しては、被害児への共感的理解ができた上での謝罪が必
要。形だけの謝罪をさせるのは何の解決にもならない
 最も謝罪すべきはCW(被害児、加害児双方に)
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