2010年11月5日金曜日

【J.I.メールニュースNo.476】 コンパクトシティは中小企業を振興する

【1】 コンパクトシティは中小企業を振興する
               都市計画家(コミュニティデザイナー)西郷真理

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       〜数字のマジックを見抜く発想の転換〜

高松市の丸亀町商店街で、食に係る連続イベントを行った際、「未来の食卓」を見
た。小
学校の給食をすべてオーガニックにしていくことに取り組んでいる南仏の村を舞台
にした
ドキュメンタリーで、本国では思わぬ大ヒットを記録したということだ。葡萄に農
薬を散
布する農民が、散布後は鼻血がとまらなくなると語るシーンがあるが、一緒に参加
してい
た、地産地消レストランを成功させた「葡萄の樹」の小役丸さんも、かつて同じ経
験をし
たそうだ。

沢山の印象に遺るカットの中で、私が気になったのは、専門家が無農薬でない野菜
は本当
に安いのだろうかと問いかける場面である。農薬や土地に対する被害、流通にかか
るエネ
ルギーの消費などを勘案すれば、実は有機野菜より高価なのではないかいうこと
だ。環境
などへの外部不経済が価格に内部化されていないという問題は、ズッと前から指摘
されて
いて別段新しいことではないが、ツイそんなことは忘れざるを得ないほど日常化し
ており、
思い出さされるとハッとするのである。

私が取り組んでいる中心商店街の再生にも、同じようなことがたくさんある。商店
街は、
郊外大型店に比べて、品揃えが少なく、価格が高く、サービスが悪いと言われ
る。そして
しばしば従業員一人当たりの売上げが比較される。実際、大型店では従業員ひとり
あたり
の年間売り上額は4000〜5000万円で、商店街の1000万円程度に比べれば遥かに大き
い。

これをもって効率あるいは生産性が比較されるわけだが、ちょっと待って欲し
い。これを
雇用問題と捉えれば、同じ売り上げで、商店街の方は何倍もの雇用を生み出すこと
ができ
るということだ。郊外の大型店は、その維持に、中心市街地の商店の何倍ものコス
トがか
かっているのである。利益も大きいが、それは現地には残らない。中小企業は集積
してこ
そ効果があがる。中小企業ががんばることによって地域社会は活性化し、雇用も生
み出さ
れる。コンパクトシティ(※)を実現する中心市街地は、そのような場としてきわめ
て重
要だ。

もっとも、こんな数字のマジックをいくら説いたところで、中心市街地商店街の魅
力が顧
客となる市民の目線とズレていては意味がない。中心市街地商店街はどのような役
割を果
たすべきなのか、私はここでも大きな錯覚があったと思っている。つまり、商店街
が大型
店と同じ品物で競おうとしてきたことである。言い換えれば、中小企業の育成目標
を大企
業に置いたところに間違いがある。商売の醍醐味は「どんなに優れた製品も、売る
人、使
う人がいなければ、成り立たない」ということである。この原点に立つと、商店街
には大
型店では出来ないビジネスの領域が一気に広がる。中心市街地商店街の逆襲はこれ
からが
本番である。

(※)コンパクトシティ:従来の都市計画を見直し持続可能な都市開発を目指す都
市・ま
ちづくりの政策。具体的には「住」を含めた様々な諸活動
(「職」・「学」・「遊」「憩」
など)を都市の中心部にコンパクトに集積することで、中心市街地活性化等の相乗
効果を
生もうとするもの。

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