2009年9月21日月曜日
「極北で」を読んだ!
荒野もの。1616年、北極海ではオランダとイギリスが油を求めて競って捕鯨を行っている。その中のある捕鯨船が男を一人極北に残して帰航の途についた。
男は同僚と賭けを行っていた。1年間この地で生き延びることができるのか。どう考えても人間が生きていける地ではない。しかし男は残ることにした。男はこの航海に出る直前愛する妻と生まれたばかりの子どもを亡くしていた。半ばやけになっていたのかもしれない。
この誰もいない、人間の生を拒むような地で彼は頑なに日課を守り、日記を綴り、そして神に祈る。靴職人である亡き妻の父の下で身に付けた靴作りを続けているといつの間にか妻との生活を思い出す。幸せだった日々、生まれてくる子どものことを考える日々、そのようなことを思い出しているうちに彼の元に妻が現れる。幻影の妻との日々を過ごしながら、次第に彼はこの地で生きている意味を考えていく。
1年が経ち、仲間の船がやってきたとき、彼には不思議な力が備わっていた。それは・・・
同じ極地ものでも、以前読んだこの本とはかなり印象がちがう。「エンデュアランス号」はまさに冒険活劇。1人の落伍者も出さず全員が帰還するまでの長い長い道のりを描いている血沸き肉踊る実話である。
一方「極北で」は400年前の航海日誌から紡ぎ出す小説であるが、人間の生と贖罪について深い考察をめぐらす作品である。
極北の白夜の中で主人公が苦悩する描写は、淡々としつつも無駄の無い表現で読者を引き込む。そして自然の圧倒的な力の前に一人ひとりが生きている意味を考える、そんな作品である。
amazonより
内容(「BOOK」データベースより)
1616年夏、北極海。イングランドの捕鯨船が帰国の途に着こうとしていた。トマス・ケイヴという名の寡黙な男を一人残して―。明けない夜。うなりをあげ る吹雪。闇を染めるオーロラ。雪と氷に閉ざされた極限状態のなか、ケイヴは、日々のできごとを克明に記し、生きるために獣を狩り、思い出深いヴァイオリン をアザラシたちにむけて奏でる。ケイヴはなぜ、極北の地に残ったのか。底知れない哀しみを抱えた男の越冬と魂の救済を重ねあわせた、胸をゆすぶる物語。英 国人女性作家が400年前の航海日誌と豊かなイマジネーションで紡ぎだした、壮大なスケールのデビュー長篇。
著者略歴 (「BOOK著者紹介情報」より)
ハーディング,ジョージーナ
1955年英国生まれ。ロンドンの出版界で働き、80年に来日。翌年まで東京で編集の仕事に従事。以後アジア各地、ヨーロッパ大陸を旅してまわる。現在はエセックス州コールチェスター在住(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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