2009年8月21日金曜日

地域通貨の可能性



森永卓郎氏が地域通貨アトムについて記事を掲載していたので転載する。





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アトム通貨が示す地域通貨の可能性

2009年8月20日(森永卓郎=経済アナリスト)

 高田馬場・早稲田周辺の商店街限定で使用できる地域通貨「アトム通貨」が全国に拡がる動きを見せている。今年 (2009年)4月に埼玉県川口市の商店街が導入したのを皮切りに、札幌市・熊本市など全国6カ所の商店街も導入を検討、8月中の正式導入を目ざす。地域 通貨の利用エリアが広がるのは珍しい、という。地域通貨の効果を検証し、もってこの動きを評価してみたい。

8月中にも「アトム通貨」が全国に拡がる

 東京都新宿区の高田馬場、早稲田周辺地域で導入されている「アトム通貨」が全国展開する方向になった。アトム通貨実行委員会が適用地域の拡大を決 め、6月24日に説明会を開くと、北海道から九州まで全国6カ所の商店街関係者らが集まった。なかには8月から制度を導入しようと考えている商店街もある とのことで、全国展開が実現するのは確実だ。

 2004年から始まったアトム通貨は、鉄腕アトムの舞台が高田馬場であることにちなんで、手塚治虫さんの「人と人とのつながりの大切にし、子ども たちや地球の未来を守る」という理念に共鳴した人たちが始めた活動だ。アトム通貨は、現在10馬力、50馬力、100馬力という3種類の紙幣が発行され、 それぞれに鉄腕アトムのイラストが入っている。紙幣の価値は1馬力=1円だ。

 アトム通貨を配ろうとする人は、実行委員会にどのような目的で使用するのかを申告して、アトム通貨を同価値の現金で買い取る。消費者がアトム通貨 を手に入れるのには二つの方法がある。一つは「プロジェクト」と呼ばれているものだ。たとえば、特定の商店で買い物をしたときにエコバッグを持参すると、 その商店がアトム通貨をその消費者に手渡すというものだ。マンガ図書館で鉄腕アトムのコミックスを閲覧すると、アトム通貨がもらえるといったものもある。 もう一つは、「イベント」と呼ばれるもので、街の清掃活動に参加した場合などにアトム通貨がもらえる。

 実は、アトム通貨は「地域通貨」と呼ばれるものの一種だ。地域通貨というのは、文字通り「地域コミュニティのなかだけで通用する通貨」のことをい う。地域通貨は、アトム通貨の他に、千葉市の「ピーナッツ」、東京渋谷の「earthday money」、宝塚市の「ZUKA」、湯布院町の「yufu」など、さまざまな地域でこれまでも使われてきた。

 また通貨のタイプも様々で、アトム通貨のような紙幣タイプ以外に、通帳タイプや電子マネータイプが存在する。神奈川県大和市では、市が発行する ICカードに「LOVES」と呼ばれる地域通貨を搭載している。今後の地域通貨は、管理が容易な電子マネーが主流になっていくかもしれない。

地域通貨は「地元に落ちる」

 なぜ最近になって地域通貨が登場したのか。一番大きな目的は、地域経済の活性化だ。いま日本では、76兆円もの日本銀行券が発行されている。この うち7割が個人所有といわれているから、家庭には53兆円の現金がある勘定になる。1億2500万人の人口で割ると一人あたり44万円。平均的な4人世帯 の家庭だと176万円もの現金があるはずだ。

 だが現実には、そんな現金を持っている家庭はほとんどない。市場原理のお金は一部の人のところに集中してしまうのだ。その点、地域通貨は、地元の購買力が地元に落ちるような仕掛けになっている。地域コミュニティのなかだけで通用する通貨は外に出て行かないからだ。

 たとえば、アトム通貨を使える商店はたくさんあるが、ほとんどが高田馬場や早稲田の周辺地域に立地する商店ばかりだ。だからアトム通貨を発行した分は、必ず地元で消費され、確実に地元経済を潤すのだ。

 地域通貨の第二の利点は、それが環境や福祉などの共生事業と結びつくということだ。たとえばエコバッグを持参する消費者や、地域の清掃をした市民 グループは、これまでは、純粋なボランティアとして活動しているに過ぎなかった。ところが、地域通貨を導入すれば、そうした活動に報酬を支払うことが可能 になる。

 仮に清掃1時間当たり500円分の地域通貨を支払うと決めたとすると、そこで支払われた地域通貨は、地域通貨の受け入れをする地元の商店で使われ ることになる。地域通貨を受け入れる商店は、広告をしたり、値引き販売をして顧客を集めるのと同様の効果が得られるようになるのだ。

地域通貨は地域ごとの金融政策を可能にする

 地域通貨での支払いを受け入れた商店が地域通貨をどのように扱うのかは、地域通貨の種類によって異なる。本稿のテーマであるアトム通貨の場合でい うと、商店が実行委員会にアトム通貨を持ち込めば、現金と交換してくれることになっている。商店のコスト負担はない。一方の消費者は、いままで無償だった 社会活動で事実上の報酬を受けられることになる。つまり消費者にとっても地域通貨の創設はありがたいことなのだ。

 もちろん地域通貨の活躍の場は、環境問題だけではない。むしろ、最も地域通貨に馴染むのは福祉の分野だ。例えば、一人暮らし老人の介護は、税金を 使ってプロがやるより、地元住民がついでのときにやる方が効率的だ。介護をした地元住民の報酬を地域通貨で支払えば、財政負担も小さくできるし、住み慣れ た街で介護を受けられる高齢者も幸せになれるのだ。

 地域通貨の第三の利点は、これはおそらくアトム通貨にだけに限られることだが、地域通貨の退蔵需要が存在するということだ。アトム通貨は、毎年デ ザインが変わる。だから、アトムファンだけでなく貨幣コレクターも当然欲しがるのだ。アトム通貨自身の転売は禁じられているが、有効期限があるので、期限 切れのものの売買は止められないだろう。そうなると当然コレクターが動いてくる。

 ただ、私は地域通貨にはもう一つの可能性があると思っている。それは地域ごとの金融政策に使えるのではないかということだ。お金は全国共通だか ら、これまでは金融政策は全国同じ金融政策しか採れないと考えられてきた。しかし、地域通貨が広範に使われるようになると、景気の悪い地域に集中的に地域 通貨を投入するという景気対策が可能になる。アトム通貨の全国展開は、そうした可能性をより高めると考えられるのではないだろうか。

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以前、職場提案で導入検討についての提案書を提出したことがある。お金のない北海道だからこそ公費で投入した資金や付加価値が地域内だけで流通するようにすべきと考える。

電子マネーの形にすることで決済や流通量のコントロールがしやすくなると思う。その際、あくまで北海道のお金は北海道内だけで流通するようにこだわるために、道内企業のコンビニなどと提携してはどうか。また、偽造や盗みができないように支払いと受け手のICカードの両方を端末に入れるような形とし、店舗や公的機関でしか決済ができないようにしてはどうか。

流通量をコントロールするために最初に交付する人を現在公費でサービスを受けている高齢者、障害者、母子家庭等に限定する。またサービス提供者が「円」に交換できるだけの資金を確保しておく必要がある。また換金は道税と相殺できるようにすることでサービス提供者を増やす効果も期待できるのではないか。

年度越えしてしまわないようにアトムは毎年デザインを変えているようだが、電子マネーにすることでそのあたりの手続きも比較的簡単にできる。
さらにICカードで交換履歴を確認できるので、セキュリティの他に、実際にどのような需要-供給があるのかを確認できるようにすることで政策立案にも効果的に利用できるのではないか。

アトムのホームページをみると法的な妥当性も金融庁のお墨付きが出ているようなので、ここは積極的に導入してみてはどうか。

北海道で導入するならやはり「ポラリス」か。

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