発達障害者への支援メニューについては、診断機会や療育効果、本人を取り巻く支援体制の濃密度の違いから年齢層を次の3つに分けて考えるべきと思う。
1 乳幼児
2 学齢期の児童
3 成人
診断や支援を受けることなく学齢期を経過してしまった成人は、すでにさまざまな社会階層の中に存在しているはずであり、どのような支援を必要とするかについては、学齢期及びまだそこに至らない乳幼児と分けて考える必要があると思う。
まず乳幼児期については、早期発見、早期療育を実現するためスクリーニングの年齢を、より個人の特性が発現する5歳ころの検診を行うことが一番効果的と思われる。
スクリーニングでは「漏れる」ことが一番問題となるため支援対象者をなるべく広く取れるようにした上で少しずつ対象者を絞り込むことが必要である。
その上で支援対象者への療育の提供を行うこととなるが人口全体に対する障害の出現率は文部科学省の調査では養護学校を除く児童生徒の6%という比率がすべての年齢層でも共通であると想定するとどこの市町村でも人口の一定数は支援対象者であるということであり、その意味では医療サービスと同じく、どこに住んでいても共通して受けることが可能なサービス体制を整えることが必須である。
また、乳幼児期は本人への支援と同じ位、家庭での療育の重要性を考えるとむしろ親への支援の方にウェイトをおくべきである。
親と子との愛着関係をどれだけうまく構築できるかが乳幼児期の児童の人格形成、ひいてはその後の社会生活の能力向上の鍵でありそこをポイントとして支援メニューを検討すべきと考える。
特に親への支援が不足することから生ずる二次障害や虐待、育児放棄は、その後の本人の人生だけでなく、親の離婚→母子家庭→生活保護受給となる等、周囲の人間の人生にも大きな影響を及ぼす。
またそのことにより、結果的に社会保障として必要な経費も増嵩することとなる。
親が積極的に療育プログラムに参加しやすくするためには、子育て支援メニューの一環であることをもっと明確に打ち出す必要があり、
そのためには、
・障害が一定の確率で生ずること
・障害があってもその後の支援が充実していること
・どのような支援を行うことが本人、家族にとって必要か
という情報を、出産前にすべての親が知っておく必要があると考える。
そこで、
・出産前の母親・父親教室での情報提供や
・親子手帳(母子手帳)への記載等
あらゆる方法で親への理解促進を行うべきと考える。
また、これらの支援は基本的に費用負担が伴わない形で利用できるようにすることで親の安心感と費用負担を嫌って支援を受けることを敬遠することによる漏れを回避できると考える。
次に学齢期の支援であるが、この時期は本人の社会生活の場や人間関係が広がりを見せ、さらに活動範囲も乳幼児期とは異なり大きく広がりを見せることになる。
そこで、親への支援は引き続き行うべきではあるが、本人への支援を充実させていく必要がある。
その際、学校だけでなく放課後や休日も含めた一体的な支援を構築すべきである。
現在の国の想定では、学校とそれ以外、文部科学省と厚生労働省という枠組みで物事が進められ、本人、家族、そして現場のスタッフが苦労するという構図になっている。
もし、仮にこの枠組みを大きく変化させることができるのであれば、学齢期の教育・生活支援に掛かる費用を一体的に支給決定し、一人一人に合った学習の場、生活支援の場を保障することがベストではないかと考える。
以前、佐賀県の服巻氏の講演で聞いた印象的な言葉で
「学校という多人数の環境に行くことがそもそも大変なのに、教育がそこでしか受けることができないことがそもそも問題」というのがある。
無理やり「学校」で教育を受けさせることが二次障害を引き起こしていることになる。
現在の教育経費は都道府県や市町村に地方交付税という形で財源措置され「学校」という場でしか義務教育を受けられない形になっているが、これは身体・知的障害者の支援費が月額で入所施設に支払われていたため帰省中に自宅の近くのヘルパー利用ができなかったのと同じ構図である。
理想的なのは、教育予算についても個人に対して個別給付がなされ、その支給決定額の範囲内で個人個人にあった教育を様々な場で受けることが可能となることである。
個別教育計画の策定に基づいたきめ細かな教育メニューが必要な児童生徒にはそれに応じた人員配置が可能となるような財源措置が必要であり、そのためにも個人個人で必要な費用算定を行う上でも、個別給付という形をとるのが理想的と考える。
次善の策として、学校現場で作成することになっている個別の教育支援計画であるが、これを外部に委託する経費として必要経費を個別給付するというのはどうであろう。
教育サービスを提供する学校は本人・親との関係性においては当事者同士ということであり客観的な関係性を構築するのは難しいのではないかと思われる。
また、担当教諭は支援が必要な本人以外の児童・生徒も含めて学級経営を行っており
そこに個別の教育支援計画を策定することは相当の努力と時間を必要とする。(よって支援が必要な児童・生徒を敬遠するということもあるのではないか)
そうであれば、個別の教育支援計画と学校外での個別支援計画を一体的に策定し、さらにモニタリング、マネジメントを相談支援事業者等一定のスキルや経験を有する外部の人間に委託できるようにしてはどうだろうか。
これにより
・本人は学校内、学校外にかかわらず一体的な支援を保障される
・親は学年が変わることにより担当教諭が変わることを心配することもなく、教師とも
一定の距離を置ける
・教諭は教育の専門家として客観的に本人、親と向き合うことができる
・相談支援事業者は一定数の支援計画を受託することで、事業として経営が可能になる
というメリットが出てくると考えられる。
単価については、新規作成時と見直し時は高めに設定し、例月分は現在の自立支援給費の計画策定費と同額とし、毎月のモニタリングや関係機関との調整を義務付ける。
さらに1人の相談支援専門員当たりの受託可能人数を設定し、効果的な支援計画を担保する。
各学校単位で1~2人の相談支援専門員が担当できるようにするのが学校サイドとの調整上効果的と思われるので、中学校の場合 30人学級×4クラス×3学年×6%=21名 となるので25名くらいを目安として小学校は6学年なので2名体制ではどうか。
支給決定は小中高の12年間となり、高校卒業後は個別の教育支援計画を含まない通常の個別支援計画策定のための支給決定となる。
これにより、学齢児の支援で月額25万程度の収入となり、相談支援事業単体でも事業経営が可能となるため、学校のある市町村には相談支援事業者が必ず存在できるようになるのではないか。
成人期のサービスについては後日検討してみたい。
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